就活の時期になり、リクルートスーツを着て説明会回りをするようになると、望む望まざるに関わらず親がアドバイスをくれることがあります。
応援してくれるならよいのですが、中には、努力して取った内定を否定されたり、辞退するよう言われたりするケースもあるようです。
親の考え方を強要された場合、どのように対応したらよいのでしょうか。
そこで「親世代にありがちな考え方」について考えていきます。
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あなたは将来について、誰に相談してる?
思えば平成元年、日本経済は“山”の頂上にいた。当時の世界時価総額ランキング上位50社中、日本企業が32社を占めていたし(今はたった1社だ)、GDP(国内総生産)をはじめとする各種経済指標も日本は世界のトップ水準にあった。日経平均株価は平成元年12月29日の大納会で3万8915円を付けた。地価高騰も凄まじく、東京23区の地価が米国全体の地価の合計を上回るといわれた。
平成元年と平成30年の世界時価総額ランキングを比較してみると、一目瞭然なのが、「いま、日本は世界に追い抜かれている」ということ。
しかし、平成元年のとき、日本が世界のトップを走っていた過去の栄光を忘れられず、その「昔の価値観」をまだ捨て切れていない人やその価値観が昔のものであることに気づいていない人が存在します。
それは誰でしょうか。
場合によっては、それは自分の両親であるかもしれません。
私の場合、その「昔の価値観」で物を話す最も身近な人間は、両親でした。
何か家族で話す機会があれば、少しは出てくる「将来のこと」を、両親は自分たちが学生だった頃や社会人になりたての頃の姿を学生である「私」に映して話してくることがほとんどです。
これは、就職においてもそうでした。
「俺らの頃は〜」
「私や私の周りは〜」
を枕詞に話し出すことがほとんどではないでしょうか。
でも、これは仕方がありません。
とりわけ学生と交流する機会のない社会人にとって、現代の学生の事情を知るわけもなく、また理解のしようがないし、ましてやその解決法を授けるのは不可能であるからです。
両親は「安定した職業」に就いてほしいと思っていることが多いが...
このような、現代ならではの就職事情についてあまり理解していない両親は、昔の価値観のまま子供に対して就活アドバイスをすることがあります。
その中で多いのが、「安定した企業に入ってほしい」ということ。
この意見自体には、就活中の学生にも賛同できる部分もあるかもしれませんが、もしかしたらその「安定」の定義にズレがある可能性があります。
つまり、「安定した企業」を両親は「潰れなさそうな大企業」と理解している一方で、就活生の子供は「将来的に成功しそうな企業」と理解しているかもしれません。
このようにズレが生じていると、やはり子供の企業選びに口出しをしてくる親が生じてきてしまうのです。
私は、就職における安定を指すときに以下のように意味を含んでいると考えています。
- 毎月同じ頃に、自分が生活できるだけの給料が振り込まれている環境(給与の安定)
- 会社が倒産せず、20、30年先でも働くことができる環境(会社の安定)
- ストレスがなく、毎日楽しみながら働くことができる環境(自分の精神の安定)
もし、親と「安定」について話すことがあれば、それが何を意味しており、それを満たす環境を選ぶための基準や指標について話す必要があることでしょう。
ここまで、「親」と「子ども」の就職に対する考え方の違いについて考えてきましたが、もしかすると、もっと親側が強い思想を持っている可能性があります。
では、その偏見としてありがちなものを挙げ、それらに対してどのように対処すべきかを考えていきます。
1、安定を求めて大手有名企業に行くべき
ここまでを読めばわかるように、大企業イコール安定という概念は、今の時代適切ではないことでしょう。
IT化が進み変化のスピードが猛烈に速いこの時代では、大企業ほど変化に時間がかかるため、スピーディなベンチャー企業にシェアを奪われることもざらに起こっています。
安定を求めるなら50年後もなくならない業種を予測して選ぶか、時代に左右されないスキルを自分自身が持つしかありません。
2、公務員になれば一生安泰である
これも現在ではそうは言い切れないでしょう。
公務員は未だ年功序列で昇格、昇給する職種も多いですが、世相に合わせて募集人数が変動しますし、給与をカットされたりします。
また、教員のように資格は取れても就業できない場合もあります。
離職率が低いため先輩が多くいて、若いうちは自分の意見で職場を改善したりということが難しく、そもそも監督官庁の指導の下にある業務のため、基本的にマニュアル通りにやることが求められます。
主にサービス業であるため、世間体や周りの目を常に気にしなければなりませんし、どんなに悪質なクレーマーでも原則サービスの利用を拒否できません。
状況によっては精神的苦痛を伴うこともあるでしょう。
全員がポジションに応じて同じことを繰り返し行うような事務的作業は、将来的にはAIに取って代わられる可能性が高く、長く経験したスキルはいずれ無用の長物になる懸念もあります。
3、ベンチャーや無名の小さい企業はブラックに違いない
これもただの先入観であると言えます。
できたばかりで無名で小さくても、利益率と成長率の高い企業はたくさんあるでしょう。
また、大手の下請けなどで安定した利益が長年ありますが、立場上社名の認知度はほとんどないという企業もあります。
そもそもブラックの定義とは何でしょうか。
確かに給料が最低賃金を割っていたり、入社の前後で雇用条件が違ったりという悪質な企業もあります。
しかし、「単にできたばかりだから」「無名だから」「ちょっとネットでネガティブな噂が書き込まれているから」といって、それらを全て一括りでブラックだというのは違うと思います。
ベンチャーや小さい企業の方が自分で何でもやらねばならないこともあり、大変ではありますが、その裁量や成長のしやすさという面では大企業より勝る場合もあります。
就職市場での価値ということを考えたら、ずっと公務員として事務作業をしている人のそれよりもはるかに大きく、将来性の期待値も高いと思います。
自分の生き方は自分で決めるべき
基本的には就活中の学生ももう大人ですから、親の意見は参考に聞いても、自分の生き方は自分で決めるべきであると思います。
感情的にならないように、根拠と共に話し合いましょう。
親の最大の懸念は、子供がリスクの少ない安定した人生を送れるかという愛情のものですが、そもそも安定の解釈が親の世代とは違うのです。
前述した通り、どこに行っても通用するスキルを少しでも早く自分のものにすることが、今の時代は最大の安定なのです。